完成した服装の彼は 今日も1人ベランダに

ありきたりなイヤホンで 知らない曲を聴いてる

明るい髪色の彼女は 黒いカメラ首に提げ

鈍い顔をしながら 花々を瞳に写してる

知らない誰かの日常の中に映る

ちっぽけな私は どんな姿をしてるだろう

明るさも優しさも美しさも強さも

持ち合わせてはいないけれど

強い風に吹かれてもしなやかに靡く

柳のようなひとに 私はなりたい

 

 

 

帆布

 

もう会えないね 今まで楽しかったよ

終わりを急かすように 降車ボタンが赤く点滅している

ずっとずっと長い夢を見てたよう

ついに目覚めてしまったけど

 

春先の冷たい風 片側二車線の道路

嬉しかった赤信号も 今ではただ煩わしくて

俯いて早足で騒々しい街を抜ける

自分の歩幅の小ささに うんざりする

 

あなたの色に染まったままで

元の色なんてもう忘れたよ

もうあなたは違う色でいるのかな

どうか幸せで なんて思えないの

 

土砂降りの日も 雷の日も

どんな日だって 楽しかったの

 

独りよがりだったよ 我慢してたんだね  

本当にごめんね

ないものねだりばかりだったけれど

本当は貰ってばっかりで

今更気づいたよ

花瓶の水が枯れるまで気づかない 僕だから

 

沢山の色を塗りたくって 忘れようとしたけど

濁っていくばかり 疲れていくばかり

色褪せたキャンバスにふたりで描いた色模様

もうきっと塗り重ねてしまったのでしょう

 

やり直せるなら もっとちゃんとそばに居て

僕なりの愛で満たすから

つまらない意地なんて捨てて

くだらないエゴなんて捨てて

あなたの横で眠るから

ふたりの色で描くから

 

 

 

 

よるには

煙草の灰が落ちていくように 何気ない一日が終わっていく

街の星々が一つまた一つと消えて残るのは

孤独と淡い黄色だけ

精神論とかもういいよ

誰にでも当てはまる

私だけの話をしてよ

誰かの幸せに纏めないで 心の底まで手を伸ばして

あなたの声の形をなぞって 私に教えて

制約と愉楽

蛇口の冷たさ

水滴のリズム

鳥の会話や風の香り

洗濯物のダンス

コンクリートの焦げた匂い

角度を持って流れる花弁

水溜まりの中を泳ぐ雲

猫のあくび 人のぬくもり

自由と不自由の隙間の心地よさを味わうこと

 

絨毯

厳しい冬の寒さに耐えようやく開いた桜の花も

激しい雨に打たれて落ちてしまうことが心苦しい

 

それでも尚地面を彩り続ける美しさと強さが胸に染みる

 

綺麗事ばかりな世の中で 

本音だけが聴こえる場所を大切にしたい